sham2651’s blog

浦和レッズの戦術分析とか Twitterアカウント→ @sham_ignis

2019.7.6 ホーム仙台戦レビュー

2019ホーム 仙台戦の分析

 

 両チームの狙い

f:id:sham2651:20190713172612j:plain

1.浦和のポゼッション

3CB+2CHでボールの前進を試みる。相手の第一プレッシャーラインを左右CBが出し手となって超えていく。特に前半から岩波が同サイドなら右シャドー、右WBに逆サイドならロングボールで左WBにボールをつけるパターンでファイナルサードに運び込むことに成功した。

一方で相手DLの背後にスルーパスを通せるパターンは得点シーン以外ほぼ見られなかった。後述する仙台の非ポゼッション時のスキームから考えて、蔚山戦のようにCHが背後にフリーランを行うなど再現性のある攻撃スキームが垣間見れなかった。

2.浦和の非ポゼッション

 シャドーがCH脇に落ちる5-4-1を採用。中盤4枚で中央のパスコースを制限して外に追い出し、チャンスがあればWBが相手SBにプレッシャーをかけて能動的にボールを奪いに行く。

しかし仙台はSHを中央に寄せて浦和のWB、CB、CH、SHの間でボールを引き出せる位置に立つため、完全に中央を閉めることはできなかった。一方で仙台の2トップへのボールに対して効果的に対処できたためエリア内からのシュートはほぼ抑えることができた。 またセカンドボールの回収もできたため先述のポゼッションでの優位もあり高いボール支配率を実現できた。

3.仙台のポゼッション

SHが中央に絞りシャドー化する。2CBに対して浦和はFW1枚で対処するのでCBどちらかがドリブルで前進できればSHへの縦パスが狙える。SHが前を向ければ高さと足元の上手さがある2トップにボールを当ててエリア内に侵入する。

4.仙台の非ポゼッション

相手が第一プレッシャーラインを超えてくればSHが相手WBをマークするために下がるため5バックないし6バックで対処する。逆に2トップが上手く相手CBを追い込めればSHが前に出て2トップ+SHで3CBにあたりショートカウンターを狙う。

 

 

得点シーン

f:id:sham2651:20190713182059j:plain

得点シーンでは仙台SHの関口が前に出た所を岩波→武藤のラインでハーフスペースにボールを送り込み、武藤の個人技で前にターンすることに成功。シマオマテがギャンブル的に武藤を捕まえようとするが絶妙な間で引き付けた武藤のスルーパスに、オフサイドラインぎりぎりで飛び出した興梠が反応。GKとの1on1を制した。

 

総括

両チームとも前半はそれぞれの狙いの中で堅い試合になったと思います。浦和は最後の崩しにいたる動きがとぼしく決定機をつくれず、一方の仙台は前線からの限定が上手くいかず、頼みの2トップもロングボールを期待よりもおさめられなかったためボールを握られる時間が多かったためシュートに持ち込めないという展開でした。

試合が動いた原因として関口のプレッシャーへの出るタイミングが遅かったこと、中央へのパスコースの限定が不十分であったことが浦和にとって最大のビッグチャンスを生み出す契機になりました。

武藤の狭い局面でのターンのアイディアとそれを表現できる技術、興梠の決定力で試合をものにできたのは大きかったですが、一方で再現性のある攻撃が構築できなかったことは今後の課題となります。特にこの試合では右サイドで機転が作れていたことから3人目が関わる崩しの形が見えなかったのは非常に不満でした。今後の大槻組長の手腕を注視していきたいですね。

仙台としては1失点とはいえ後半勝負はプランの内でしたでしょうから椎橋の後半早々での退場が非常に悔やまれるところです。とはいえ渡邊監督はシーズン中での方針転換でソリッドなチームに導けているので大崩れすることなくシーズンを戦えていけると思います。

 

 以上

 

2019 J1リーグ第9節清水戦レビュー

f:id:sham2651:20190502150557j:plain

今回はJ1第9節アウェー清水戦をレビューします。

両チームスタメンは上記の通り。

まず両チームは前からプレッシャーをかけて高い位置でボールを奪いゴールに素早く殺到する狙いを持って試合に臨みます。解説の戸田さんがハーフラインを超えるかどうかの戦いになると語ったほど両チームが前線からボールに積極的にアプローチする展開が続きます。

その中でよりうまく立ち回ったのが清水でした。清水は2トップ+SHで浦和側最終ラインに圧力をかけ効果的にプレッシャーをかけられました。浦和はアンカーの青木が最終ラインに入って打開を試みるも却って最終ラインが4枚になってしまいより清水のプレッシャーを浴びる格好になりました。前半の浦和側のシュートが1本だったのもそれを裏付けています。

f:id:sham2651:20190502150603j:plain

 

清水としては前半うちにゴールを奪いたかった展開でしたが、何度かあったショートカウンターの機会をオフサイド等でフイにしたため得点を奪えず前半をスコアレスで終了します。

後半に入り浦和はビルドアップの方法を修正します。まず清水側が前からハメに来た場合、無理せずいったんGK西川に戻します。この際、CBの槙野、鈴木が外に広がりマウリシオが状況に合わせてペナルティエリアの幅で左右に開きます。そして中盤3センターの誰かがDL付近に下がりGK、CB、CHで菱形を形成するようにポジショニングします。

f:id:sham2651:20190502150614j:plain

浦和は56分に長澤、69分に青木がそれぞれビルドアップの出口として機能すると相手陣内に侵入する回数が劇的に向上し試合を優位に進め始めます。清水は運動量の落ちたテセに替えてドウグラスを投入するも前半の再現は出来ず、自陣にリトリートする回数が増えました。結果的に自陣でボールを奪い逆襲に転じた清水のボールを引っかけて「カウンターのカウンター」を繰り出した浦和がCKを奪い、先制すると膠着していた試合の流れが一変し最後は浦和がカウンターからエース興梠が平成ラストゴールとなる追加点を決めて試合を決定づけました。

 

浦和は塩分濃度の高い試合内容ながらこれでリーグ三連勝と波に乗り始めました。特に後半に入りビルドアップの部分で改善が見られたのは今後の前から奪いに来るチームに対するモデルケースとなる試合になりました。とはいえ押し込んだ状況から相手を崩すまでには至っておらず、相変わらず得点パターンはセットプレー絡みとカウンターからという欠点が残っています。また守備でも前からプレッシャーをかけて奪いきる形が出来ず5-4-1リトリートでしのいでいる状況も残ったままです。

次節はホームで磐田と対戦となります。瀕死の名波政権が死に物狂いで勝ち点を奪いに来るのか、はたまた空中分解寸前の状況なのかを含めて注目となる一戦です。また次回お目にかかれればと思います。

 

 

 

 

 

 

清水戦レビュー 5バック殺し

清水戦スタメン

[8.19 J1第23節](アイスタ)
※18:00開始
主審:井上知大
副審:馬場規、数原武志
<出場メンバー>
[清水エスパルス]
先発
GK 13 六反勇治
DF 27 飯田貴敬
DF 3 ファン・ソッコ
DF 45 角田誠
DF 25 松原后
MF 10 白崎凌兵
MF 17 河井陽介
MF 30 金子翔太
MF 29 石毛秀樹
FW 23 北川航也
FW 49 ドウグラス
控え
GK 1 西部洋平
DF 32 水谷拓磨
MF 11 村田和哉
MF 15 兵働昭弘
MF 19 ミッチェル・デューク
FW 18 長谷川悠
FW 20 クリスラン
監督
ヤン・ヨンソン

[浦和レッズ]
先発
GK 1 西川周作
DF 31 岩波拓也
DF 2 マウリシオ
DF 5 槙野智章
MF 27 橋岡大樹
MF 16 青木拓矢
MF 22 阿部勇樹
MF 38 菊池大介
MF 9 武藤雄樹
FW 12 ファブリシオ
FW 30 興梠慎三
控え
GK 28 福島春樹
DF 26 荻原拓也
MF 10 柏木陽介
MF 11 マルティノス
MF 15 長澤和輝
MF 7 武富孝介
FW 20 李忠成
監督
オズワルド・オリヴェイラ

 

 

 

f:id:sham2651:20180826161356p:plain

両チームのフォーメーションとスタメンは上記の通り。

浦和は3-1-4-2 、清水は4-4-2の布陣でスタート。

お互いにミスマッチの起きやすい布陣だったものの、それを上手くモノにしたのはホームの清水だった。

前半5分には早くも金子のゴールで先制。このシーンは典型的な5バック攻略法が炸裂したものでなので詳しく見ていこう。

f:id:sham2651:20180826163820p:plain

 まず、清水はポゼッション時に両SHを中に絞らせ空いたライン際をSBがオーバーラップさせる。こうすることで浦和の最終ライン5枚に対して清水は逆サイドのSBまで含めれば6枚を前線に並べられる。また浦和のWBは基本的に下がってスペースを埋める為、CMFが清水のSBをチェックすることになる。

前半5分のシーンではロングボールの溢れ球を収めた清水のCMF河井が左に展開しようと前に持ちだす。これに対し浦和の中盤3枚が左にスライドしパスコースを遮断しにかかる。この時点で上図の通り、CMF河井と右SHにポジションを写したFW北川のパスコースが空く。北川にボールが入ると浦和側で対応出来るのはCB槙野のみとなり、裏に抜ける金子をフリーにして失点。清水の絵に書いた通りのゴールとなった。

この5バック殺しに対して浦和としては中盤を3枚から4枚に増やすことが対策となるものの、そうするとリトリートしてスペースを埋める意識に欠けるファブリシオを起用するのは得策ではない上に1トップ興梠の孤立化という堀体制時の課題に逆戻りすることになるので非常に歯痒いところ。

実際、西川が前半痛んだタイミングで選手を集めたオリベイラファブリシオをSHに下げる5-4-1に変更。阿部の直接FKで同点に追いつくとファブリシオは相変わらずリトリート時のポジショニングがチグハグだったものの何とか耐えて前半をイーブンで終えることに成功した。 

それでも清水は後半にセットプレーとミドルの溢れを押し込んで得点。浦和はセットプレーの崩れとカウンターから得点シーン3-3のドローとなった。

 

何とかドローで勝ち点1を積み上げた浦和は課題として5バック殺し対策が浮上した。

次節の名古屋もポゼッションにこだわるチームだけに対策をどう立てるのか注目したい。

 

 

 

 

 

 

 

 

vs磐田戦 ミラーゲームと3-1-4-2

f:id:sham2651:20180819171236p:plain

両チームスタメン

浦和レッズ

GK 1 西川 周作

DF 31 岩波 拓也

DF 22 阿部 勇樹

DF 5 槙野 智章

MF 46 森脇 良太

MF 10 柏木 陽介

MF 16 青木 拓矢

MF 3 宇賀神 友弥

MF 9 武藤 雄樹

FW 12 ファブリシオ

FW 30 興梠 慎三

 

 

 

SUB

GK 28 福島 春樹

DF 26 荻原 拓也

DF 27 橋岡 大樹

MF 11 マルティノス

MF 15 長澤 和輝

MF 38 菊池 大介

FW 20 李 忠成

 

 

 

ジュビロ磐田

GK 21 カミンスキー

DF 3 大井 健太郎

DF 5 櫻内 渚

DF 24 小川 大貴

DF 35 森下 俊

DF 41 高橋 祥平

MF 7 田口 泰士

MF 11 松浦 拓弥

MF 19 山田 大記

MF 23 山本 康裕

FW 20 川又 堅碁

 

 

 

SUB

GK 36 三浦 龍輝

DF 33 藤田 義明

MF 14 松本 昌也

MF 27 荒木 大吾

MF 30 上原 力也

FW 16 中野 誠也

FW 22 大久保 嘉人

 

 

f:id:sham2651:20180819101658p:plain

・ミラーゲームとなった前半

スタメン、フォーメーションは上記の通り。

3-4-2-1同士のマッチアップを仕掛けてきた磐田とマウリシオを出場停止となり阿部をCBに起用した一戦は浦和のバックライン3枚に磐田の3トップがプレッシャーをかけ前から嵌めようとする展開でスタート。

浦和はこれを見て左右のCBをサイドに広げボランチの青木をDLまで下げることで擬似4バックを形成し相手のプレスを躱しはじめます。

磐田もビルドアップでは右CBの高橋をサイドラインまで広げ、左WBが低い位置に陣取ることで擬似4バックを形成し浦和のプレッシャーを躱します。

そのため、序盤は両チームとも相手を敵陣に押し込む展開が続きました。

その中で浦和は4分に柏木→興梠のホットラインでロングカウンターを仕掛け決定機を演出するも相手GKカミンスキーを破れません。しかしこのシュートから流れを掴んだ浦和は押し込んだ相手に一度ボールを奪われても素早いネガティヴトランジションでボールを回収して2次攻撃に繋がるシーンを多く作ります。

 対する磐田も29分にポゼッションに成功すると浦和DL背後のスペースに川又を走らせ、こぼれ球を繋いで山田のフィニッシュがポストを直撃するなどこの時間帯以降は一進一退の攻防を展開します。

 浦和はこの試合ポゼッション時に左CB槙野→森脇、右CB岩波(右WB森脇)→宇賀神とそれぞれサイドチェンジを多用しました。これでペナルティエリア角を取りクロスからヘディングを狙う意図があったと思いましたが決定機は13分の槙野→森脇へのサイドチェンジから宇賀神が狙ったシーンくらいで上手くいったわけではないですがここ2試合で点が取れない中、工夫をもって攻略しようという意図が観れたのは良かったのではないでしょうか。

f:id:sham2651:20180819171236p:plain

・仕掛けるオリベイラ、3-1-4-2 にシステム変更

後半に入り浦和はポジションに修正を入れて臨みました。

上図のように中盤の構成を3枚に変更したことが効きます。これにより武藤、柏木を相手ボランチ二枚が引き受ける形がはっきりしました。

また磐田は前半から前線3枚の前プレを狙いたいがためにリトリート時の2シャドーのポジショニングが不安定で時折5-2-3の形になるため2の部分に対する守備の負担が大きく、この弱点から試合が動くことになります。

54分、CKのこぼれ球を拾った浦和はバックラインに戻し左CBの槙野に渡ります。

この時点で磐田の3トップは後方に取り残されてしまい、磐田のWBの前のスペースを埋める選手がいません。ボランチがスライドして対応しようとするものの後半に入りペースが落ちていた磐田はフリーで槙野にくさびのパスを許します。

f:id:sham2651:20180819172006j:plain

槙野が宇賀神へくさびを入れる。磐田はボランチの山本がサイドまで引っ張り出される。

宇賀神はサイドに張りこのボールを呼び込みます。マッチアップする磐田のWB櫻内はファブリシオが気になり不用意に飛び込めなかったためダイレクトで中に折り返されます。

f:id:sham2651:20180819174953j:plain

宇賀神が中へパス。逆サイドに繋がれば数的同数の状態が生まれる。

宇賀神が折り返した時点で磐田の左シャドーの松浦は戻っていないため逆サイドに展開できれば優位な状況が出来つつありました。
興梠→ファブリシオと繋いで右WB森脇がフリーでボールを貰うとそこから再び興梠→青木のミドル→ファブリシオのゴールまでスムーズに得点が生まれます。

f:id:sham2651:20180819175513j:plain

この時点でまだ松浦は戻りきれず、ノープレッシャーで森脇がバイタルエリアにボールを送り込む。

先制すればいつも通り浦和はカウンターを狙う体勢に入ります。

60分には自陣右サイドで奪ったボールを裏に走り込んだ左WB宇賀神に繋ぎます。このカウンターは一度阻止されるも青木→武藤→ファブリシオのラインでゴール。

その後もセットプレーとカウンターで追加点を奪い4-0で快勝。4試合ぶりの勝利となりました。

 

この試合で目立ったのはWBの質の違いでした。左右の大外を起点に崩した1点目のシーンは今後のポゼッション時の崩しのパターンとして重宝できそうな形だったと思います。

磐田は5-4-1なのか5-2-3なのかハッキリとした守備の形が最後まで見れませんでした。この辺りを整理しないとズルズル順位表を下げそうな戦いでしたので名波監督のテコ入れを急ぎたいところ。